くらしナビ・学ぶ:「塾・習い事に助成」好評 小学5、6年生対象 千葉・南房総市、利用申請63%

毎日新聞 2015年07月27日 東京朝刊

道路に面した塾のガラス窓には「塾利用券使えます」の張り紙=南房総市和田町の学習塾で
道路に面した塾のガラス窓には「塾利用券使えます」の張り紙=南房総市和田町の学習塾で
南房総市
南房総市

 急激な少子高齢化が進む過疎の町、千葉県南房総市が今年度、塾や習い事の費用を世帯の所得に応じて助成する「学校外教育サービス利用助成事業」をスタートさせ、注目を集めている。市内の小学5、6年生全員を対象にした全国初の試みだという。今月8日に愛知県稲沢市議会の議員4人が視察に訪れるなど、市教育委員会には県内外の教委や議会から問い合わせが相次いでいる。制度開始から2カ月。市民の受け止め方や制度の課題を探った。

 ◇所得に応じ6段階

 「中1の兄の塾代が月2万円。5年生の末娘はまだ早いかなと思っていたけれど、助成制度ができたので同じ塾に通わせている。娘は勉強が楽しくなったようだ」。市内に住む女性(42)はうれしそうに話す。

 月額7000〜1000円を「利用券」で支給する制度を市教委が始めたのは今年6月。対象となる小学校9校の5、6年生は計561人(7月1日現在)。このうち63%の356人が利用を申請した。

 助成額は所得に応じて6段階に分かれている。月額2000円の比較的所得の高い世帯からの申請が全体の4割強を占めている。7000円助成される生活保護世帯からの申請はゼロ。市教委が小学校から聞き取ったところ、「家から塾まで何キロもあり、バスもほとんど走っていない。車などで送迎する必要があるが、それができない」ことが申請をためらう原因になっているようだという。市教委は「保護者の経済力による教育格差の解消が狙いの一つ。こういう家庭に一番活用してほしいのだが」と残念がる。

 ◇54事業者利用可能

 「利用券」を使えるのは市教委に登録してある塾や習い事の54の事業者。内訳は「学習塾」30、サッカーやクラシックバレエ、卓球など「スポーツ教室」が5、そろばん、英会話、習字、ピアノなど「その他」が19。教室の数では71になり、このうち半数が南房総市の近隣市町にある。

 事業者は今回の助成制度を好意的に受け止めている。市内の学習塾経営者は「子どもを塾に通わせるきっかけになったと言う親が多い」と話す。隣接する館山市内のバレエ教室は「南房総市から通っている子の母親に頼まれて登録した。館山市や鋸南町も同じ制度を始めればいいのに、という声がほかの親からも聞こえてくる」という。

 ただ、問題点を指摘する意見もある。南房総市内の英会話中心の学習塾経営者は「中学生の塾代は倍にはね上がる。本当は中学生への助成が重要だ。小学校限りで塾をやめてしまわないか心配」と指摘する。

 ◇少子化対策に

 房総半島南端に位置する南房総市の人口は約4万。9年前、館山市を囲む7町村が合併した過疎自治体の集合体で、人口減が止まらない。少子化も激しく、15歳未満は一昨年までの5年間で15%も減少した。このため、市教委は子育て環境の充実と学力向上を目指し、「教育立市」をスローガンに掲げて0〜15歳の教育に力を注いできた。

 今後は、親が送迎できない家庭の事情も考慮して「放課後こどもクラブ」を開く。塾講師に学校に来てもらい、国語や算数、習字、そろばんの教室を開き、「利用券」を使える場を増やす方針だ。

 学校外教育サービス利用助成事業の初年度の事業費は2100万円。このうち1600万円は「地方創生交付金」を充てているが、来年度以降は自主財源で継続するとしている。

 隣の館山市や鴨川市の市教委幹部は「南房総市は子どもが少ないからできた」「うちは学校での授業の充実に予算を注ぐ」など、冷ややかに見守っており、今のところ同調する動きはない。【中島章隆】

 ◇大阪市は中学生対象 所得制限緩和へ

 一方、大阪市にも中学生の塾や習い事にかかる費用を助成する制度がある。こちらは低所得者層にも平等に学ぶ機会を提供するのが狙いだ。

 生活保護や就学援助を受けている世帯を対象に2012年9月、中学生1人当たり月額1万円を上限に、西成区で試行的に導入した。13年12月には市内全域に拡大。さらに今年10月からは「中所得者層も含めて子育ての負担を軽減する」として所得制限を緩和し、市内の中学生の約半分が対象となるようにする。

 「塾に行くようになってコンスタントに勉強するようになり、本人もやる気が出てきた」。北区の中学3年の女子生徒(15)を横目に母親(56)は顔をほころばせた。昨年4月から、自宅近くにある学習塾「個別指導キャンパス天六校」に週3日通い、数学、英語、理科の指導を受けている。通塾のきっかけは塾代助成制度を知ったことだ。

 女子生徒は中学入学後、成績が振るわなかった。「レベルに合わせて教えてくれる個別指導の塾に行きたい」とせがまれたが、母親は迷ったという。「お金が続くか分からず、途中でやめさせることになったらかわいそう」。そんな時、中学校から塾代助成の案内が届いた。母親は「あれで踏ん切りがついた」。

 塾通いを始めてから成績は上昇し、定期テストで40点以上アップした教科もある。今夏の夏期講習も受講するつもりで、「しっかり復習をして入試に向けて準備したい」と意気込む。

 ただ、助成を受けられる中学生のうち、14年度の利用者は約4割にとどまる。市が実施したアンケートでは、利用しない理由を「助成金だけでは塾に通えない」とする保護者もいた。

 市もこうした課題は認識しており、利用者を増やすために知恵を絞っている。

 西成区では13年度から、月額1万円で週2回通える「西成まなび塾」を開講している。運営は学習塾が担い、区役所など2カ所の市有施設を無償で使ってもらうことで、授業料を抑えた。生徒の約6割は塾代助成の対象者で、「自己負担がないから通いやすい」という声も上がっているという。8月からは、淀川区も同様の取り組みを始める。

 大阪市こども青少年局の担当者は「学校外の学習にお金をかけている子どもほど、学力が高いという調査結果もある。今後も利用を促進していきたい」と話している。【大久保昂】

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 ◇南房総市の学校外教育サービス利用助成事業

助成額/月 世帯定義        交付人数

7000円 生活保護世帯        0

6000円 市民税非課税世帯     43

5000円 *4万8600円以下   56

3000円 *7万7100円以下   40

2000円 *21万1200円以下 148

1000円 *21万1201円以上  67

 *は所得に応じて課される市民税額(市民税所得割り額)

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